★Kより報告

JCCU協同組合塾 2010年度第1回例会報告
テーマ「世界の協同組合の歴史と協同組合原則」
■日 時:2010年6月30日 18時~21時
■場 所:コーププラザ4階小3会議室
 「賀川豊彦献身100年記念事業」が行われた昨年、日本生協連に働く有志で「賀川豊彦研究会」を発足させ、初代会長の賀川豊彦の思想と活動について学んできました。2010年度は、この会を発展させ、JCCU協同組合塾とし、協同組合について幅広く学ぶことにしました。第1回例会のテーマは、「世界の協同組合の歴史と協同組合原則」とし、生協総研理事の栗本昭氏に講師をお願いしました。
 18時より開会し、最初に参加者どうしの自己紹介を行いました。そして18時30分から20時まで栗本講師の講演があり、20時から第2部として交流会を行いました。交流会では、参加者それぞれから感想を述べ合い、学んだことを深め合いました。イギリスのロッチデール公正先駆者組合から、現代まで約160年の歴史を振り返り、協同組合が大事にしなければなならないことを、過去の失敗の歴史から学ぶことができました。

 栗本氏は、「世界の協同組合の歴史」「協同組合原則の内容と意義」「世界の協同組合の最近の動向」「協同組合に期待されること」について講演されました。以下、要約です。
(7/29修正:一部はしょりすぎて不正確になっていたのを修正し、ヨーロッパの生協の最近の動向を付け加えている。栗本氏に校正をお願いしてご協力いただきました。感謝申し上げますm(_ _)m)
 
<世界の協同組合の歴史>
 協同組合の始まりは、イギリスのロッチデール公正先駆者組合とされる。それ以前にも協同組合は設立されたが、組合員への掛売りなどのため資金が不足し経営はうまく行かなかった。ロッチデール公正先駆者組合は、出資金を集めたこと、現金主義をとったことなど、経営体としての基礎をつくったことで近代的協同組合のルーツといわれる。ロッチデール公正先駆者組合を始め、ドイツの農村信用組合・庶民金庫、デンマークの酪農協同組合、フランスの労働者協同組合なども協同組合のルーツといわれる。
 1895年に国際協同組合同盟(ICA)が設立された。本部はロンドンにおかれた。2つの大戦や東西冷戦の中で、労働運動などが分裂を繰り返したのに対し、ICAは統一を守ってきた。
 ロシア革命以降、ソ連型の「協同組合の国家化」が進んだ。ソ連は、すべての農村に協同組合(コルホーズ)を上からつくった。計画や人事も国家主導で行われた。発展途上国では、協同組合の官僚化が行われた。インドでは、信用協同組合法がつくられ、官製の協同組合が生まれた。
 1960年代に流通革命が進行し,欧米の生協は民間の流通資本との対抗から構造改革を行った。しかし生協らしさ(協同組合のアイディンティティ)を失う結果となり、1980年代には、ドイツ、フランス、アメリカなどの生協は壊滅状態となった。また,1980年代に冷戦が終結して市場経済移行が進むと,旧社会主義国や発展途上国では協同組合は旧体制の遺物として否定されるか,先進的な西側資本との激しい競争に巻き込まれた。
 こうした状況に対し、ICAは、1980年のモスクワ大会においてレイドロウ報告『西暦2000年における協同組合』を発表し、協同組合の思想の危機(アイディンティの危機)の警鐘を鳴らした。1988年のストックホルム大会におけるマルコス報告『協同組合の基本的価値』はレイドロウ報告への回答として「組合員に帰れ」と提起した。そして1992年の東京大会におけるベーク報告『グローバルな世界における協同組合の価値』、1995年のICA創立100周年記念マンチェスター大会におけるマクファーソン報告で『協同組合のアイディンティ声明』が発表された。この論議の過程で、日本の生協は女性が中心に活動していること、組合員参加が重視されていることなどが評価され、ICAの「協同組合の基本的価値」の論議に貢献した。

<協同組合原則の内容と意義>
 1995年、『協同組合のアイディンティティ声明』が決議された。声明では、①協同組合の定義、②協同組合の価値、③協同組合の原則、が謳われている。
協同組合の定義は、「協同組合は、人びとの自治的な組織であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じて、共通の経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえることを目的とする。」とされた。これは、株式会社との違い、非営利組織や社会運動体との違いを明確にした。
協同組合の価値は、「協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とする。」「協同組合の創始者たちの伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、他人への配慮という倫理的価値を信条とする。」とされた。この場合の自助とは、他助(公的サービスなど)に対し、組合員による集団的な自助を意味する。
協同組合原則は、「《第1原則》自発的で開かれた組合員制、《第2原則》組合員による民主的管理、《第3原則》組合員の経済的参加、《第4原則》自治と自立、《第5原則》教育、訓練、広報、《第6原則》協同組合間協同、《第7原則》コミュニティへの関与」とされた。
第4原則と第7原則は、マンチェスター大会で追加された。第4原則の自治と自立は、
以前、社会主義国や発展途上国では、国家主導で協同組合を管理していたので盛り込まれなかった。第7原則のコミュニティへの関与は、「協同組合は組合員利益のためだけでなく地域社会の持続的発展のために公益的な活動をする必要がある」ことから追加された。しかし、コミュニティへの関与は、組合員によって承認された政策を通じて実施されることを前提としている。
 協同組合とNPOの共通点は、公式に組織されたものであること、民間の非営利組織であること、ボランティアの参加などである。一方、協同組合とNPOの違いは、利潤分配について、協同組合は制限付きで分配があるのに対し、NPOは非分配である。また協同組合は、1人1票制の民主的管理に対し、NPOは、自主管理である。また、協同組合は、公益より共益がメインなのに対し、NPOは、共益より公益を重視する。

<世界の協同組合運動の最近の動向>
○世界の協同組合の広がりと多様化
 協同組合のある国を見ると、南北アメリカ18カ国、アフリカ12カ国、ヨーロッパ35カ国、アジア28カ国の93カ国であり、組合員数は、7億2781万人である。そのうちアジアが4億1528万人で最も多い。組合員数を協同組合の種類別に見ると、クレジット・ユニオン29.5%、多目的協同組合23.2%(中国の供銷合作社)、生協21.2%、農協10.4%、保険協同組合6.8%と続く。
○イタリアの社会的協同組合
 カトリック教会による慈善事業の伝統を引き継ぎ、社会的連帯協同組合が発展したことを背景として1991年に社会的協同組合法が制定され、「コミュニティの共同利益を市民の間で人間発達と社会的統合のために推進する企業」(第1条)を育成することになった。すなわち,A型は福祉、医療、教育などの社会サービスを提供する専門的協同組合であるが,B型は社会的弱者を労働者として社会参加させることを目的としており,障害者、薬物依存症、受刑者などが3割占めると税制・社会保険・随意契約等による優遇措置をうけることができる。このようにイタリアの社会的協同組合は、共益と公益のハイブリッド型の協同組合として発展した。また,労働者、利用者、ボランティア、自治体などが組合員として参加するマルチ・ステークホルダー型協同組合としての特徴をもっている。
○スウェーデンの保育協同組合
 スウェーデンでは、市町村が行っていた公的保育の民営化が進んでいる。1990年代から①両親による利用者主導の協同組合、②ワーカーによる労働者協同組合、③特定保育理論に基づくボランラリー組織などが生まれている。それらの協同組合や非営利組織は、働く労働者、親から公的保育を上回る高い満足度を得て成功している。
○イギリス生協の取り組み
 イギリスの生協は、郊外の大型店から撤退し、市内のスーパーマーケットとコンビニへ集中するコミュニティ・リティラーとしての事業戦略を打ち出し、小売シェアを伸ばしている。また、コミュニティ割戻し(利用高割戻しを地域の諸団体への寄付)、福祉施設・朝食クラブ等への割引販売など地域貢献を行い、フェアトレードの推進では小売業界でのリーダーシップを発揮し、生協としてのアイディンティティを明確にしている。イギリスの協同組合銀行は、1992年から倫理政策を打ち出し,環境汚染,武器製造,動物実験などを行う企業への融資を停止し,中小企業の環境問題の取り組みの支援をすすめている。その持続可能性報告は世界最高との評価を得ている。
○発展途上国のクレジット・ユニオン
 バングラデシュのグラミン・バンクのような小額融資(マイクロ・クレジット)は、農村の内発的発展や女性の社会的地位の向上のために発展途上国で活発に取り組まれているが,同様の取り組みは19世紀から信用協同組合として始まっている。すなわち,ヨーロッパでは高利貸しへの対抗として、農民や中小商工業者の間で信用協同組合が発展したが,20世紀になってアメリカやカナダでクレジット・ユニオンが発達し,現在では発展途上国を含めて地域,職場,団体(教会など)の「共通の絆」に基づいた世界的な運動が発展している。
<協同組合に期待されること>
第1に、協同組合のアイディンティティの強化が求められる。ICAの協同組合原則の変遷で見てきたように、協同組合の自治・自立の強化、組合員参加の強化が重要な課題である。日本においては、若い人たちの参加が課題である。
第2に、環境変化に対応したイノベーションが求められる。高齢化や格差・貧困などへの対処などの新しいニーズの発見、こうしたニーズを満たす組織と事業の革新が求められている。また,労働者協同組合法による新しい雇用創出の取り組みが期待される。
 第3に市民社会における役割の発揮が求められる。持続可能な社会に向けての取り組みや市民の民主主義と参加の推進なども協同組合の役割である。
以上

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【2010/07/26 20:25】 | 主催企画報告
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