<Mより発信>
徳永直の小説「太陽のない街」に登場する消費組合の旗とそのデザインを調べる必要がおきて、途中駅で下車して駅前の市立図書館にいき、事前にネットで在庫があるはずの書架を探したが文庫本は見当たらない。中央公論社『日本の文学39』に収録されているものを見つけ出してザザッと斜め読みしていって消費組合の活動に言及した部分をコピーしてきた。
「太陽のない街」は、小林多喜二の「蟹工船」とともにプロレタリア文学の代表作品として受験勉強の中で覚えたものだが、読んだことはない。大体、「蟹工船」も冒頭の「おい、地獄さ行くんだで」の一行で脱落した青春時代の私(おそまつで恐縮(^^ゞ)。それに比べればこちらの作品は感覚的にも入っていきやすかったので、つらい作業ではなかった。
調査目的の消費組合の旗とそのデザインについて書かれた部分も見つかったが、その他の部分もついでにこちらでご紹介する。2箇所でボリュームもあるため2回に分けるが、消費組合の旗とそのデザインに言及した部分はその2になる。

【徳永直の小説「太陽のない街」の消費組合活動への言及部分】その1
大正15年(1926年)の共同印刷の大争議の渦中にいた労働者だった徳永直が小説に書いたものだということで、プロレタリア文学の中でもインテリゲンチャ出身でない作家の作品なのだという。それで文章がリアルでわかりやすいのだと思う。 (Wikipediaの「共同印刷争議」の項はこちら)
当時の労働争議の実態と、争議支援を積極的に行い、階級性を強調したモスクワ派とも呼ばれる「関東消費組合連盟」のイメージがいっぺんでつかめた。
1)416頁より
――来たよウ――おーい。兵糧がきたよウ。
一番長屋の共同水道線の傍で、赤い都腰巻の女房が、洗いかけのおしめをたかくさしあげて怒鳴った。
電車道を突っ切って、馬の尻尾のように跳ね上がりながら、まだ暁の、この「太陽のない街」の中通りへ突進して来た一台のトラックを発見して、女房はおしめの滴を、あたりへ振り廻しながら怒鳴ったのだ。
トラックは、見覚えのある寒冷紗の長い旗を樹てて、米袋や、醤油、味噌樽等を満載していた。長屋からも五人も六人も、女房たちや、ウソ寒い寝まき一枚の子供たちまでが飛び出してきた。
――どれ、どれ、あれは、あれはな――。
出しゃ張りのおたつ婆さんが、みなの前へ突ん出て来て、大声で云った。
――連盟のトラックだ。関東消費組合連盟のトラックだよ――。
自分の名でも漢字でも読めないおたつ婆さんが、眼前を激しい振動で走り過ぎるトラックの上に翻る旗の文字だけは、その恰好で見覚えがあった。
――ばんざあい。
トラックの上で、二、三人の男が幾本もの手を差し出した。
――ばんざあい。
女房や、子供たちが、一斉に応じた。――なあ、見ろい、他の商人たちの店はつぶれたって、どうだい、俺たちの消費組合はあの通りだ、豪気なもんだ。
………
→その2へ続く

【2010/06/14 22:16】 | アーカイブ
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