<Mより発信>
『日協連』1956年1/1号に賀川会長の「1956年に寄せる」という文章が掲載されている。以下、ご紹介する。

【1956年に寄せる】日協連会長 賀川 豊彦
日本の「生協」は、1956年度は是非単一再保険組織を形成して、全国の下部組織を充実せしめるようにしなければならない。

私は労働組合を基盤とする火災共済組合の危険率が相当な高率にのぼるであろうと思っていたが、果せるかな、昭和30年新潟市の大火災で、労組中心の火災共済組合は、僅かに百有余件の契約で、数千万円の損害を見るに至った。幸いにして融資の方法がついて善かったが、之を見ても、火災共済組合だけにたよることの危険なことがよくわかる。
之に反して、生命共済組合を組織するならば、火災の如く集団的罹災の心配が割合に少なくてすむ。殊に近年日本の死亡率は英国の死亡率より良好な成績を示している位であるから、火災保険の如く、一度に数千万円の損害を蒙る心配がない。
更にもし、労働金庫の43庫が連合して、労働者福祉対策協議会と連絡をとり、生活協同組合と連合して、単一の再保険組合の設立を計りうるならば、単協の生命共済運動は実に容易になると思う。
全国農協生命共済の成功の理由は、農林中央金庫を中心として、各県の信用組合連合会と横の連絡をとり、此処に、全国的再保険組織を完全に実現せしめた所にある。
厚生省は、郵貯の減退、簡易保険の不振が農村の生命共済の躍進に原因がありとして、労働階級の生命共済組合の進出に賛成しつつも、資本主義擁護の立場より、労働階級のみ全面的進出に一種の心配を持っていることは否定できない。しかし、弱小組合が、単協の力で、生命保険組合をやることの危険性を憂慮することも正当なことだと思う。
だから、勤労階級の側に於ても、当局の心配を減退せしめる意味に於て、(1)労金、(2)福対、(3)労組、(4)生協の4団体がガッシリ四つに組み生命共済の再保険に何等手落ちのなきことを計る必要がある。

こうなれば、当局が反対する理由は全くないと思う。
我等の理想は日本の再建にある。ただ利己的欲望から出資するものは長続きはしない。ドイツの再建が早いのは、農村及び都市の勤労階級の間に、生命保険組合の絶大なる組織があったのである。フレデリック・ライファイゼンが生命保険組合を、信用組合内に併置したことが、ドイツ労働組合の信用を高めた。ハンブルグの消費組合連合会は、生命保険組合の金融を得て、世界に誇る可き生産組合工場を建設することが出来た。
スエーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドに於ける堅実なる組合の発展は全くこの生命保険組合の金融によるものである。

だから、現今、日本の生活協同組合が金融に苦しんでいるとすれば、第二次大戦前のドイツの労組の方式を学び、生命保険組合(日本では生命共済組合)の積立金の融資を受けて、勤労者自身の生活解放の為めに立ち上る可きだと思う。
農協の生命共済は既に500億円に近い契約高を持ち、前途洋々たるものがある。都市の勤労階級の総収入は、農民に比較して更に多いものがある。もし、その勤労者が生活解放に立上り、生命共済組合の積立金の金融を受ける乙とが出来るならば、勤労者の住宅、被服、食糧の凡てを自己資金によって賄い得ることは容易である。その方策を知り得た英国と米国は遅蒔きではあったが、生命保険組合の組織にかかった。英国はスエーデンの如く盛んではないが、米国の生命保険協同組合はメリル・リンコルン氏を中心として、4つの団体が出来ているが、オハイオ州デートンに本部をおくものは、今や凡での営業保険会社に敗けない大きなものとなった。ニューヨーク生命保険会社にはまだ勝てないが、僅か創立後20年で、米国第2の大組織になってしまった。
そこで注意しなければならぬことは、自然危険率が減退する割合に、日本の道徳的危険率が高いことである。農村の協同組合の犯罪が昭和28年度は490件近くもあった。かくの如き高率では、農協も結束が鈍れてくる。

堅実な農協人にこの失敗ありとすれば、酒色の誘惑の多い都市労働階級の道徳的危険率は相当に高いものがあると想像すべきである。労働金属より金融を受けた労働者が、工場に行って、高利貸をするような話をきく。そして、同胞を搾取した金を配色に持って行く状態が露呈されるならば、生命共済組合の組織にも一種の危険性を感じざるを得ない。唯物弁証法では絶対に、生命共済組合の組織は不可能である。飽迄、正直を廉潔と互助と、友愛の精神的基盤なくして、人類新生の計画経済を打建てることは出来ない。1956年の生命共済運動は新しき覚悟を以って出発すべ(ママ)である。
以上

【2010/05/12 00:45】 | アーカイブ
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