20160210協同組合塾例会講師の丸山氏トリミング.jpg

<Mより発信>
 今回の学習会では、生活クラブ連合会で国際担当、1996年の日本生協連韓国調査団・団長を歴任、現在は参加型システム研究所とJC総研で客員研究員をされている韓国生協運動研究の第一人者である丸山茂樹さんを講師にお迎えし、韓国の生協運動の歴史と概況と「協同組合基本法」の内容、ソウル市の「協同組合都市-ソウル構想」の概要とその実践について解説いただいた。冒頭の写真は、講演をされる丸山さん。
 20人の参加があり(労組員10名、非労組員10名)、講演後の質疑応答および交流会でも、丸山氏には丁寧にご対応いただいた。

【2015年度第2回例会(2016年2/10)のご報告】
1.テーマ:「韓国における生協運動と協同組合基本法」  
2.講師:丸山茂樹氏
  (参加型システム研究所・JC総研 客員研究員)

3.講演概要
 韓国では戦前に日本人官僚による官製的な協同組合が組織されたが、その他に自律的な協同組合(金融中心)が1932年には290組合ほど存在、しかし戦争激化の下に弾圧された。
 戦後の自律的な協同組合は1960年代のキリスト者による信用協同組合から始まり、当時の軍事政権側はセマウル金庫法を作ってそれに対抗した。1990年代の金大中、盧武鉉政権下の自由貿易主義政策下で格差社会化が進み、与野党間で激しい対立はありつつも、社会の貧困格差問題をなんとかカバーしなくてはならないという認識は共有化されていた。韓国経済の70%を10大財閥が支配し、年収も大財閥社員・公務員・中小企業社員の間で大きな格差が存在している。

 現在、韓国の地域生協には「ハンサルリム」「iCOOP」「ドゥレ」「幸福中心(旧女性民友会)」の4つのグループが存在する(どの連合会にも属さない生協もある)。「ハンサルリム」と「iCOOP」は全国展開、「ドゥレ」「幸福中心」は首都圏エリアで活動している。(いずれも大きな店舗をもたず有機農法や自然食品などを扱う小さな店舗が事業の中心。)
 「ハンサルリム」はもともと「一つの大きなくらし」という意味で、1980年代に農民運動を基盤にした韓国独自のエコロジー運動から生まれた。日本の生協が都市の労働者や住民の運動として始まったのとは違い、韓国の生協は農民運動家が都市住民を組織した運動として始まっているのが特徴。「幸福中心」は、同時期のフェミニズム運動を基盤にした「女性民友会」から派生した生協で、その後「幸福中心生協」と名称変更した。(1998年に生協法が施行される以前からあったのはこの2つだった。)
 「iCOOP」は1998年に設立されているが、アイデアに富み、設計・建築の専門家を組織し都市開発を進め、住宅団地、生産工場、流通センター、公園などからなる生協クラスターという都市を建設したりもして、政府や自治体からも高く評価されている。激しい情勢変化にも対応して自己変革を行い成長を続けている。商品事業は本部主導で進められている。
 「ドゥレ生協」の「ドゥレ」は「講」とか「結(ゆい)」という意味で、首都圏コープ事業連合と名乗っていた小規模な生協の集まりで、iCOOPと同年に誕生した。商品事業は各生協ごとに進められ、自己変革が進んでいない。

 韓国で生協法が成立したのは1998年で、非常に制約の多い内容であったが、それまで任意団体や社団法人として活動して生協が、生協法人として活動できることとなった。法の成立は日本より50年遅れたが、2010年には生協法が改定され、多くの制約が撤廃、ICA協同組合原則が取り入れられ、連合会が規定されるなど画期的な改定であった。その後の発展のスピードは驚くほど速く、供給は年に15~20%の成長を続けたが、2015年はウォン高や韓国経済の失速の影響を受け、成長は鈍化している。
 2012年には「協同組合基本法」が施行された。これは生協法や農協法などの上位に立つ法律ではなく、既存の協同組合法のままでもよいし、協同組合基本法によってもよい。基本法の場合、5人以上で「協同組合」の設立が可能で、金融・保険以外なんでもでき、日本でできない労働や福祉の協同組合もできる。基本法では「協同組合」と「社会的協同組合」を規定しており、公益事業が40%以上の非営利法人で「社会的協同組合」として認可されると税制等の優遇措置が受けられ、公的な調達先としても優先される。

 市民団体「参与連帯」を設立した朴元淳氏が2011年にソウル市長に当選し、「協同組合都市-ソウル構想」を策定した。朴市長が主導した「グローバル社会的経済フォーラム(GSEF)」でソウル宣言を採択、格差社会の解消のために、1000万人のソウル市民が何らかの協同組合の組合員として民主的な経済の参加者となり、市内GDPの5%、雇用の8%を協同組合が担うことを目指した。2013年に「協同組合活性化支援条例」を制定、2014年には「社会的経済基本条例」を制定して、協同組合だけでなく、コミュニティビジネスや社会的企業をソウル市が人的経済的にバックアップすることになり、朴市長は2014年に再選された。(「参与連帯」は権力をもつ一人ひとりのデータを集積し、立候補前に政党に公認させない落薦運動、公認されてしまったら落選運動というような政治活動を展開してきた市民団体で、そこからソウル市長が生れている。)
 韓国の場合、国政レベルでは複雑な構造があるが、いずれにしても「協同組合」の育成・発展、「参加型経済」を通じて社会の諸問題の解決を目指しており、その動向や成否は注目に値する。
 
下の写真は学習会の全体の様子。
20160210協同組合塾例会全体風景トリミング.jpg

 また、今回の2/10(水)協同組合塾定例会での企画は、期せずして生協総合研究所の協同組合法制度研究会での企画と「韓国の生協運動と協同組合基本法」というテーマで当初予定の2/8(月)の同日程で内容がバッティングしていた。生協総研の企画の講師は、iCOOP 協同組合研究所所長の金亨美さん、協同組合塾の企画は丸山さんということだったが、丸山さんは、金さんとは長いおつきあいがあり、金さんの講演等にはいつも参加されているということだったので、直前で日程を調整し、2/8に総研企画、2/10に協同組合塾の企画というように調整ができた。さらに今回の総研の企画がオープン研究会だったため、塾の方でも再案内のタイミングで合わせてお知らせをしたところ7人が両方の企画に参加し、多角的な情報をいただいたことにより理解が深まったという声をいただいた。業務と自主企画の垣根を超えたコラボレーション事例として貴重だったと思われる。

 日本生協連の50周年記念事業で全国の生協運動の年史編纂事業の責任者だった斎藤嘉璋さんがその後に新書版にまとめた『現代日本生協運動小史』の韓国語版が2012年に「iCOOP」によって出版されている。それを記念して企画された研修会に講師として招かれた嘉璋さんが韓国訪問記をブログにアップされているのでご参照ください。 
嘉璋さんの韓国訪問記の記事はこちら

 なお、初代代表幹事のKさんが日本生協連を卒業された後、共同代表幹事をつとめていただいたYさんが関西の職場に異動することになった。今回の企画提案はYさんからで全体会司会もつとめられており、講師の丸山さんと並んだところがうまく撮れているので記念にアップさせていただく。
20160210協同組合塾例会丸山・柳下氏トリミング.jpg

【2016/02/29 12:56】 | 主催企画報告
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