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<Mより発信> ※藤田さんの講演が近づいたため、2015年12/28の記事アップを再掲いたします。

【文献紹介】藤田孝典著『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)

 もう10年以上前のことだろうか。街角で『ビッグイシュー』とかいうタイトルの雑誌を売る姿が気になっていた頃、ビッグイシュー日本の方の話を聞く企画が日本生協連の有志によって開催された。私は残念ながら参加できずにバックナンバーだけでもと頒けていただいて『ビッグイシュー日本版』の実物を読んで衝撃を受けた。ホームレスの仕事をつくり自立を支援するためのストリートマガジン事業はイギリスから始まり、日本でも始まっていたということで、その内容も読み応えが十二分にあった。以来、私はHPをチェックして面白そうなテーマの号はJR四ツ谷駅頭の販売員さんから買って読んできた。設立10周年のシンポジウム企画で浜矩子さんの話を聞いてきた内容はこちらでも報告済み
 その後、テレビの報道等で私が住んでいるさいたま市に生活困窮者支援のNPO法人「ほっとプラス」というところがあることがわかり、一度きちんと知りたいものだと思ってきた。協同組合塾の幹事会で幹事のYさんから千葉の生活クラブ生協で「ほっとプラス」の藤田さんの講演会があって好評だったという情報と塾でも講演してもらおうという提案があり、2015年度の企画でお願いすることになり、その後、2016年3/30(水)で講演を引き受けていただいた。そしてYさんからベストセラーの『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』を回してもらって読んだ。まさに、「老後の貧困はひとごとではない」ということに共感した。
 「下流老人」とは普通に暮らすことができず“下流”の生活を強いられる貧困高齢者を意味する造語とのこと。現在の高齢者だけでなく、近く老後を迎える人々にも「一億総老後崩壊」ともいえる状況が生れる危険性が増しているという。
 日本には、相当にボロが出ているとはいえ国民皆保険制度があるが、アメリカにはないので中流の人々も個人的蓄えを使い尽くせば生活保護を受けることになるという話はよく聞いていた。敗戦後、対米従属の政策をとってきた日本だが、曲がりなりにもある程度の社会保障制度を整備させてきていたが、非正規雇用をどんどん拡大させていくことを野放しにしている政権のもとで、貧困層が増大している。自分がそういうことに直面するまできちんと向き合って考えないできている日本人が多すぎるのではないか。
 藤田さんは本書の中で、高齢者が貧困に陥る典型パターンを5つ挙げている。
〔1〕本人の病気や事故により高額な医療費がかかる
〔2〕高齢者介護施設に入居できない
〔3〕子どもがワーキングプアや引きこもりで親に寄りかかる
〔4〕熟年離婚
〔5〕認知症でも周りに頼れる家族がいない
 こういう状況に陥っている人、陥る可能性が否定できない人はみんな「ひとごと」ではないはずだ。「自分でできる自己防衛策」の章では、下流老人にならないためだけでなく、なってしまった場合にどうすれば安らかな老後を送れるかということまで言及されている。キーワードには「プライドを捨てよ」「『受援力』を身につけておく」という言葉もある。
 最終章の「一億総老後崩壊を防ぐために」の冒頭に「下流老人の問題が、人間のつくった社会システムの不備から派生しているものであるなら、その社会システムを変革できるのもまた、人間である。これからのあるべき社会のビジョンを示しながら、わたしたちの社会をどのように構築し直していけばよいのか、やや挑戦的、試行的に述べたい」とある。
 資本主義社会では一定の貧困層が出てくるのは避けられず、社会的な富の再配分の手段として生活保護制度があるのだから、受給者に厳しい目を向けるのは確かにおかしい。年金や介護保険と同様に権利として受けやすくしていくための提言もなるほとど思えた。
 以上、簡単にご紹介してきたが、3/30の協同組合塾の例会に参加する前に予習として読まれることを是非ともおすすめしておきたい。
(追記)
国民年金等の受給額が少ない場合に、不足分を生活保護を受けることができるということを本書で初めて知った。社会保障制度についてきちんと勉強する必要を痛感している。

【2016/03/23 12:55】 | 文献紹介
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