映画 日本国憲法読本の表紙

<Mより発信>
冒頭の写真は、
『「映画 日本国憲法」読本』の表紙だが、この画像には写っていない吉永小百合さんの推薦の言葉が載った金色の帯がついている。そこには以下の言葉が書かれていた。
「日本が世界一強力ですばらしい武器を持っていることを知っていますか。それは憲法第9条です。『「映画 日本国憲法」読本』を読んで下さい。世界一の武器の秘密を教えてくれます。」
「映画 日本国憲法」は2006年に渋谷区母親大会で一度観ているが、会場がわかりにくくて遅刻してしまい、冒頭を観ていなかった。そのため、主婦連さんの今回の企画のお誘いをいただいた時に即決した。

そういえば、安倍が首相になって「憲法改正」と声高に言い始めていた頃に観たのだった。その後、2007年夏の参議院選挙で惨敗して辞任。それが昨年末の衆議院選挙で民主党が惨敗した後でゾンビのように首相に返り咲いた。そして自民党に代わる政権党としての民主党に寄せられた国民の信頼が冷めてしまった後での今回の参議院選挙。その公示日前日の上映会&監督講演会となった。そして冒頭の読本も入手した。
この本については、法学館憲法研究所というところでの紹介記事がわかりやすい。

「映画 日本国憲法」を2回目に観た中で印象に残ったことの1つ目。「今の憲法は押しつけだから改正が必要だ」という改憲勢力の言い分について。
大日本帝国憲法は天皇の主権に基づくもので、アメリカ占領軍GHQは当時の幣原内閣に改正案を提出させたが、松本国務相が中心になってまとめたその改正試案は天皇に主権をおいたままのお話にならない保守的な内容だった。出演者のひとり、日高六郎さんが毎日新聞がスクープした松本試案に家族であきれた話をしていた。

そこで日本の非軍事化を強く進めようとしたマッカーサーがGHQのスタッフに1週間以内の作成を指示し、松本試案の拒否とGHQ案を提示したのだった。スタッフたちは世界の先進的な憲法の条文とともに戦後、民間組織でつくられていた憲法案を手に入る限り集めて必死に草案を作った。その様子をベアテ・シロタ・ゴードンさんが語っている。C・ダグラス・ラミスさんが語った言い方がまさにぴったりする。「日本国憲法を政府に押しつけたのは、数か月の間だけ続いた占領軍と日本国民による一種の短期同盟でした。同一の目的をもつ彼らが、政府の権力を制限する憲法を日本政府にのませたんです。だから現在に至るまで、政府の人々の立場からすると、押しつけられた、彼らの権限を制限している、と感じるのでしょう。(中略)また、これだけ長続きしているのは、日本の人々が政府に押しつけ続けてきたからです」

ジョン・ダワーの話。「1947年に日本国憲法が施行され、翌48年には中国に共産党政権が樹立されることが確実となり、東西の緊張が激化する中で1949年に中華人民共和国が誕生し1950年に朝鮮戦争が勃発。その頃にはアメリカ側も日本の再軍備を臨むという政策転換の上で、第9条の改正の圧力を明確にかけてきた」という。
元CIA顧問のチャルマーズ・ジョンソンの話。「日本人は自国の憲法にもっと誇りをもつべきです。日本国憲法は、言うまでもなくアメリカ占領軍が思いついて作成したものではありますが、1950年代の反戦運動などで日本社会に深く根ざすようになりました」
朝鮮戦争が休戦になる前の1951年、自由主義国家陣営とのみ講和するサンフランシスコ平和条約と日米安保条約がセットで締結された。この日米安保体制こそがアメリカの押しつけだということ。

ダワーの話。「問題なのは、平和主義的な政策を固守しつつも、アメリカの政策に完全に従属してしまったことです。アメリカの政策に追従するだけで、真の自治を放棄してしまった。そのことが問題なのです。」
2つ目は、憲法改正は国内問題ではなく国際問題だということ。ジョンソンは、第9条を日本の第2次世界大戦中の侵略行為への謝罪だと言う。「憲法第9条を破棄することは、謝罪を破棄することにほかなりません。そうなれば中国でも、東南アジアの華僑社会でも、朝鮮半島でも『日本はほんとうに謝罪したのか、戦争犯罪の重さをほんとうに理解する気があるのか』という問題が再燃するでしょう。」中国や韓国の出演者がまさにそのことを語っている。

そして上映会後に続いた、ジャン・ユンカーマン監督の講演が流暢な日本語で温かなお人柄が滲み出ていて実によかった。日本在住とのことでその経緯は以下のように映画のチラシの「監督のことば」にあった。
「私が初めて日本を訪れたのは1969年のことである。その頃、ベトナムのジャングルでは50万人以上のアメリカ兵が戦っていた。私は16歳だった。当時のアメリカには徴兵制があったから、いずれは自分も不当で無節操な戦争に参加しなければならないという不安を感じていた。日本の平和憲法は、アメリカにあふれ返る軍国主義と明確な対照を成す、悟りと知恵の極致のように思えた。そのことが日本にいるといつもやすらぎを感じられた理由の一つであろうし、私が長い間、日本に住み、日本で子どもたちを育てようと決めた大きな理由ともなっている。将来、私の子どもたちが、平和憲法をもつ国で子どもを育てる道を選択できなくなるかもしれないと考えると、恐ろしくてならない。」
 この映画をつくった頃の改憲の動きには、全国各地に「9条の会」ができ、その集まりで上映された。そして憲法改正反対の世論が多数派となり、政権交代もあって改憲の動きにストップをかけることができて希望をもつことができた。ところが今回の自民党の憲法改正案をみると、ゾンビどころかエイリアンというようなもっと恐ろしい改正内容が多岐にわたって盛り込まれている。

 そのひとつが「憲法停止規定」があるということ。第一次世界大戦後、ワイマール憲法という当時もっとも民主的な憲法をもったドイツがどうしてまた軍事独裁国家になったかというのは、「憲法停止規定」があったからで、大統領にその権限を与えてしまったことからだ。30数回の憲法停止があり、権力を握ったヒットラーが永久停止をしてしまった。自民党の改正案にはこんな規定まで盛り込まれている。憲法改定規定の96条を変えようとしているのは、自民党もさすがに一回の改定ですべてを変えることができないとわかっているので、今後の選挙で3分の2の議席がとれなくなっても少しずつ時間をかけて多岐にわたる改正を実現しようと考えているのだというご指摘だった。
 前回の時と異なる希望は、前回の時の上映会には50代以上の参加者が多かったが、今回は若い世代の参加者がかなり見受けられることだというお話に会場がどっと湧いた。
 監督ご自身は、続編として沖縄で映画を製作中とのことだった。やはり日米安保体制の一番のしわ寄せは沖縄にある。そこを問う作品の完成を待ちたい。
 しかしながら、「憲法停止規程」ということにはいろいろと考えさせられた。つい先だってのエジプトのクーデターで権力を握った軍部は、選挙で選ばれた大統領を拘束し、憲法停止を宣言した。大日本帝国憲法には天皇に非常大権があったが、適用されたことはなかったらしい。「国家緊急権」の概念だが、それが必要とされるのはクーデターの正当化の時くらいらしい。イギリスの名誉革命以来、国民が国家権力を制限するために「憲法」が生まれたのであり、国民に主権があるというのはそういうことだ。自民党の憲法改正の発想は国家権力に主権をもたせ、その中で国民を縛るものにするという本質がここに明確にあらわれているように思えた。
 今度の参議院選挙で、改憲勢力に3分の2を渡してはならないという思いでいっぱいである。

以下、参考情報をリンクしておく。
Wikipediaの「ヴァイマル憲法」の項はこちら

【2013/07/09 23:27】 | 文献紹介
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