<Kより発信>
【2010年度第4回例会報告 「賀川豊彦と欧州連合」】
■日 時:2010年11月18日 18時~21時30分
■場 所:コーププラザ4階第3会議室
■参加者:16名
■講 師:伴 武澄氏 共同通信社部長、賀川豊彦献身100年記念事業・東京プロジェクト広報委員長。「萬晩報(よろずばんぽう)」の主宰者でもある。
■内 容:
 JCCU協同組合塾第4回例会の講師は、ジャーナリスト(共同通信社)であり、国際平和協会(賀川豊彦が初代理事長を務めた財団)の会長の伴 武澄氏で、「賀川豊彦と欧州連合」というテーマで講演をいただいた。講演の骨子は以下のとおり。

 1935年12月、賀川豊彦はアメリカのロチェスター大学に招かれ「Brotherhood Economics」と題して講演した。講演内容はただちにニューヨークで出版され、さらに25カ国で翻訳され出版された。また、1936年8月には、カルヴァンの宗教革命400年の記念行事に招待され、ジュネーブのサン・ピエール教会とジュネーブ大学で講演した。その際にも、Brotherhood Economicsを言及した。
こうした賀川の欧米での講演のほかにも、賀川の神戸の貧しい地域に身を投じた活動や労働運動・農民運動・協同組合運動は、新聞・雑誌、伝記などを通して欧米に紹介されていった。賀川の活動を伝えた主なメディア(キリスト教網)は、以下のとおり。
●欧米のキリスト教新聞・雑誌
『New Wage』“新しい道” (1921年、スイス)
『Warte Evangelish』‘社会的伝道展望“(チュリッヒ)
『La Solidarite Sociaile』“社会的連帯”(フランス)
『Christian Century』(アメリカ) 
  賀川の活動は、これらの雑誌や新聞でルポルタージュや特集記事として紹介された。これらの雑誌や新聞は、シュワイツアー、ロマン・ロラン、ガンジーなども特集したメディアである。
●賀川の伝記
『KAGAWA L AMIDES HUMBLES』1941年出版、スイス、アーノルド・モッブ牧師著
 叢書シリーズ7巻として出された。フランス、ベルギー、ルクセンブルグ、スイスで広く読まれた。この叢書のその他の収録人物には、ジャン・ヘレデリック・オベリン、ジョン・バイヤン、ジョン・ウェズリィ、アッシジの聖フランシス、アーノルド・シュワイツアーなど。賀川は、聖人として尊敬される彼らと同じように取り上げられた。
 著者のモッブ氏は、1936年のジュネーブでの賀川との出会いから影響を受け、その後の人生を歩み、『Brotherhood Economics』の仏語訳を含め数冊の賀川論をフランス語で出版した。
『TOYOHIKO KAGAWA』1938年出版。オランダ人、ルドルフ・F・ラグラ教授著
 この伝記は、フランスのパリの神学校(FACULTE DE THEOLOGIE PROTESTANTE)の教授であったラグラが、テキストとして出版したもの。
●タッピングファミリー
 賀川の活動に共鳴したアメリカのタッピングファミリーのヘレン・タッピングは、松沢に居を構え、賀川の秘書として賀川の活動を逐次、英語で世界に発信した。
 以上のように、賀川の活動は、それに共鳴・感動した欧米の人々によって、新聞や雑誌、伝記などを通して、日本国内以上に欧米で詳しく紹介されていた。日本では、幕末に大きな役割を果たした坂本龍馬を誰でもが知っているように、欧米では、賀川はガンジー、シュワイツアーと同じように尊敬される人物として広く知られていたと思われる。
201118第4回例会報告資料(伴武澄氏).jpg
 1978年に欧州議会のコロンボ議長が、日本国会の招待により来日し、メッセージを残している。メッセージの中で以下のことを発言している。(写真は当日資料=駐日欧州共同体委員会代表部広報部発行『EUROPEAN COMMUNITY NEWS LETTER』No.31 1978年5・6月合併号のコピー)
「世界のすべての国に民主的つながりがなければ、永続的平和はない。平和への意思がなければ人類の未来はない。共同体を求める精神が世界に広がってこそ、人類はどこでも意見の一致を、またその可能性が生まれる。競争的経済は、それが国際経済の協調と協力という英知を伴ってこそ、賀川豊彦の唱えた『友愛の経済』への方向に進むことができるのである。そのためには、自分だけの利益を図るだけでなく、すべての人びと、とくに恵まれない人びとの利益を図るよう、民主的な考慮をするべきである。経済成長率をより高めるためには、文化的、精神的価値の探求が必要である。というのは、それなしでは平和もなければ自由もなく、正義も、永続的な真の幸福もないからである。」
このメッセージの内容から、賀川の思想がいかに欧米の人々に大きな影響を及ぼし、また欧州連合の理念にも影響を与えたことをうかがうことができる。
 講師の伴氏は、さらに賀川がBrotherhood Economicsで伝えたかったこと、西洋社会に伝えたかったことについて解説された。欧米では、キリスト教の兄弟愛、贖罪愛に根ざした協同組合の理想を説く賀川は、深く理解された。日本での理解のされ方とは根本的に異なると文化風土の違いについて指摘された。

 講演後、質疑に移り第1部を終了した。第2部交流会では、講師を囲み参加者の感想や近況などを交流した。
 その中でJCCU協同組合塾に毎回出席されている千葉大学の伊丹謙太郎氏は、2010年度生協総研賞・助成事業の個人研究分野に応募され、テーマ「協同組合運動協働者のオーラルヒストリー収集による賀川豊彦像の再検討―戦後日本の協同組合運動史における賀川豊彦の影響と現代的可能性」が助成対象者として選ばれたと報告された。とても意義ある研究テーマへの挑戦に大きな拍手が送られた。
(以下に伊丹謙太郎氏の千葉大学における公共哲学部門対話研究会報告をご紹介)
mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/kagawaitami.pdf
以上

<Mより追記>
当日のご報告で驚いたことがあった。『Brotherhood Economics』をスペイン語に翻訳したのはアリスメンディアリエタ神父だったというところだ。スペイン・モンドラゴン協同組合の創設者でもあり、ホセ・アスルメンディ著の『アリスメンディアリエタの協同組合思想』が石塚秀雄氏の翻訳で1990年に出版された当時に刻み込まれた名前だった。モンドラゴン協同組合の創設のルーツに賀川豊彦の思想があったということだ。年代的にも合う。
そうなると、ヨーロピアンコミュニティを生み出したルーツが賀川豊彦だったという伴さんの講演がぐっとリアルに伝わってきたということを補足させていただきたい。
なお、『アリスメンディアリエタの協同組合思想―スペイン・モンドラゴン協同組合の創設思想』は絶版のようだが、日生協資料室で閲覧が可能である。

【2011/01/13 17:47】 | 主催企画報告
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