200203『コープこうべの理念を考える』表紙縮小
<Mより発信>
 『コープこうべ創立80周年 コープこうべの理念を考える』(2002年3月発行)という資料の貴重さを見直した。年末の資料室の作業の中で書架にあった標記の冊子が目に留まり4人の方々のお名前をみてパネルディスカッションの記録とばかり思い込んでいた認識をあらためた。コープこうべ創立80周年記念事業の一つとして企画されたもので、4人の執筆者による分担執筆で構成されたものだった。ネット検索してみたが、そのようなイメージがわかるような情報は残念ながらすぐ出てこず、「国立国会図書館サーチ」では、「タイトル:コープこうべの理念を考える:コープこうべ創立80周年」「著者:高村勣 [ほか]著」「著者:コープこうべ・生協研究機構 編」と登録され、国立国会図書館蔵書として東京本館書庫にあるだけだった。( 「国立国会図書館サーチ」の情報はこちら

 その年に新理事長になられた野尻武敏氏が企画意図を「はじめに」で述べている。「第1章では創業の理念として賀川豊彦の志に思いをはせ、第2章でその創業の再認識が今なぜ必要なのかを問います。次いで第3章では、そうした生協理念が生かされるには、商品・サービスの供給事業はどうなくてはならないかに光をあて、第4章では、ことに役職員が基本の理念を日々の活動に体現してゆくにはどんな心掛けが肝要かを具体的に尋ねます。」
 そして、4人が4人ともそれぞれの視点で賀川豊彦に言及しているのが興味深い。

第1章 創業の理念:高村勣(コープこうべ名誉理事長顧問) 高村氏は、神戸と灘の「両生協とも本部を戦火で焼かれて創業以来の資料をすべて失っており、また1995年の阪神・淡路大震災でJR住吉駅前の本部が全壊し、ここでも戦後の生協史を語る貴重な資料が瓦礫と化した」こと、「コープこうべ70年史『愛と協同の志』は、創業時の記録を最大限集約した貴重な文献として伝えられていくであろう」こと、「(創立70年の)年に協同学苑ができ、そこに建てられた史料館では(中略)生協創業の理念の発信基地としての役割を果たしている」こと、「機関紙の縮刷版は現在12巻あり、この生協の歴史を知る上で極めて貴重なものである収録されているのは大正12年1月号から・・・」という言及もされている。
 日本生協連資料室にはその縮刷版が全てあるし、40年史、50年史、60年史、70年史と揃っていて、ある程度のところはこちらでわかることを再認識できたし、史資料をもとに生協理念の発信基地となるべきだということも確信をもつことができた。そして賀川豊彦の協同組合思想、その伝承について「協同組合の基本的価値論議」の中にも反映していることも含めてまとまった文章を書かれている。
第2章 今なぜ創業の理念なのか:野尻武敏(コープこうべ理事長) 野尻氏は「生協を取り巻く環境が厳しくなればなるほど贅肉をそいで事業の効率化を徹底していかねばならず、同時にそれだけ志はこれを高揚していかねばならない。どちらが欠けても生協は消えていくことになるだろう」、さらに第二次大戦後の西ドイツの復興の指導者エアハルトの言葉を踏まえて「誇りを失えば全て終わり」とし、「個人としても組織としても、できるだけしばしば生協の理念に立ち返ってみる『心のマッサージ』が欠かせない」と書く。
第3章 商品・サービスにおける「生協らしさ」とは:櫻井啓吉(コープこうべ理事) 櫻井氏は通商産業技官を経て兵庫県立生活科学研究所所長などを歴任しコープこうべの有識理事(※)となられている。「組合員ニーズと生協理念」の項では、「組合員の声が生協理念に沿わない場合は、それを拒絶する勇気も求められる。もし、組合員の声を無条件に受け入れるということになれば、生協としてのアイデンティティが維持できなくなる場合もあるからである」と言及し、「生協の商品政策は、組合員の声を優先しつつ、生協理念とのバランスをいかにとるかが今後を左右することになる」としている。
 「生協らしさ」の核心の項では「企業においても顧客満足、信頼づくりを志向しているが、企業と違う点は、生協がそのことに止まらず、よりエシカル(倫理的)である、ということ」とされている。最近になって「エシカル消費」とか「エシカルビジネス」がCSR(企業の社会的責任)に続く流行のようになっているが、生協の商品事業が組合員学習教育活動があることで、社会的なテーマ性のあるコープ商品を開発し普及してきたこと自体を「エシカル」と、十数年前に表現していたことに驚かされる。
第4章 理念の日常化:小倉修悟(コープこうべ組合長理事) 「理念の日常化こそが生協運動」、「理念の日常化は愚直なまでに基本を徹底すること」、「『コープ商品づくり』は生協運動の大黒柱で『活動と事業の一体化』の歴史そのもの」として組合員活動との関係を書いている。「生協運動」という言葉の使われ方を、今一度踏まえるべきだと思われた。

※櫻井啓吉さんは、その後、コープこうべの理事長を務められたとのこと。

【2017/01/08 23:23】 | 文献紹介
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