200203『コープこうべの理念を考える』表紙縮小
<Mより発信>
 『コープこうべ創立80周年 コープこうべの理念を考える』(2002年3月発行)という資料の貴重さを見直した。年末の資料室の作業の中で書架にあった標記の冊子が目に留まり4人の方々のお名前をみてパネルディスカッションの記録とばかり思い込んでいた認識をあらためた。コープこうべ創立80周年記念事業の一つとして企画されたもので、4人の執筆者による分担執筆で構成されたものだった。ネット検索してみたが、そのようなイメージがわかるような情報は残念ながらすぐ出てこず、「国立国会図書館サーチ」では、「タイトル:コープこうべの理念を考える:コープこうべ創立80周年」「著者:高村勣 [ほか]著」「著者:コープこうべ・生協研究機構 編」と登録され、国立国会図書館蔵書として東京本館書庫にあるだけだった。( 「国立国会図書館サーチ」の情報はこちら

 その年に新理事長になられた野尻武敏氏が企画意図を「はじめに」で述べている。「第1章では創業の理念として賀川豊彦の志に思いをはせ、第2章でその創業の再認識が今なぜ必要なのかを問います。次いで第3章では、そうした生協理念が生かされるには、商品・サービスの供給事業はどうなくてはならないかに光をあて、第4章では、ことに役職員が基本の理念を日々の活動に体現してゆくにはどんな心掛けが肝要かを具体的に尋ねます。」
 そして、4人が4人ともそれぞれの視点で賀川豊彦に言及しているのが興味深い。

第1章 創業の理念:高村勣(コープこうべ名誉理事長顧問) 高村氏は、神戸と灘の「両生協とも本部を戦火で焼かれて創業以来の資料をすべて失っており、また1995年の阪神・淡路大震災でJR住吉駅前の本部が全壊し、ここでも戦後の生協史を語る貴重な資料が瓦礫と化した」こと、「コープこうべ70年史『愛と協同の志』は、創業時の記録を最大限集約した貴重な文献として伝えられていくであろう」こと、「(創立70年の)年に協同学苑ができ、そこに建てられた史料館では(中略)生協創業の理念の発信基地としての役割を果たしている」こと、「機関紙の縮刷版は現在12巻あり、この生協の歴史を知る上で極めて貴重なものである収録されているのは大正12年1月号から・・・」という言及もされている。
 日本生協連資料室にはその縮刷版が全てあるし、40年史、50年史、60年史、70年史と揃っていて、ある程度のところはこちらでわかることを再認識できたし、史資料をもとに生協理念の発信基地となるべきだということも確信をもつことができた。そして賀川豊彦の協同組合思想、その伝承について「協同組合の基本的価値論議」の中にも反映していることも含めてまとまった文章を書かれている。
第2章 今なぜ創業の理念なのか:野尻武敏(コープこうべ理事長) 野尻氏は「生協を取り巻く環境が厳しくなればなるほど贅肉をそいで事業の効率化を徹底していかねばならず、同時にそれだけ志はこれを高揚していかねばならない。どちらが欠けても生協は消えていくことになるだろう」、さらに第二次大戦後の西ドイツの復興の指導者エアハルトの言葉を踏まえて「誇りを失えば全て終わり」とし、「個人としても組織としても、できるだけしばしば生協の理念に立ち返ってみる『心のマッサージ』が欠かせない」と書く。
第3章 商品・サービスにおける「生協らしさ」とは:櫻井啓吉(コープこうべ理事) 櫻井氏は通商産業技官を経て兵庫県立生活科学研究所所長などを歴任しコープこうべの有識理事(※)となられている。「組合員ニーズと生協理念」の項では、「組合員の声が生協理念に沿わない場合は、それを拒絶する勇気も求められる。もし、組合員の声を無条件に受け入れるということになれば、生協としてのアイデンティティが維持できなくなる場合もあるからである」と言及し、「生協の商品政策は、組合員の声を優先しつつ、生協理念とのバランスをいかにとるかが今後を左右することになる」としている。
 「生協らしさ」の核心の項では「企業においても顧客満足、信頼づくりを志向しているが、企業と違う点は、生協がそのことに止まらず、よりエシカル(倫理的)である、ということ」とされている。最近になって「エシカル消費」とか「エシカルビジネス」がCSR(企業の社会的責任)に続く流行のようになっているが、生協の商品事業が組合員学習教育活動があることで、社会的なテーマ性のあるコープ商品を開発し普及してきたこと自体を「エシカル」と、十数年前に表現していたことに驚かされる。
第4章 理念の日常化:小倉修悟(コープこうべ組合長理事) 「理念の日常化こそが生協運動」、「理念の日常化は愚直なまでに基本を徹底すること」、「『コープ商品づくり』は生協運動の大黒柱で『活動と事業の一体化』の歴史そのもの」として組合員活動との関係を書いている。「生協運動」という言葉の使われ方を、今一度踏まえるべきだと思われた。

※櫻井啓吉さんは、その後、コープこうべの理事長を務められたとのこと。

【2017/01/08 23:23】 | 文献紹介
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<Mより発信>
 「JCCU協同組合塾」の2013年第1回例会は「生協の平和活動の歴史とこれからの課題」というテーマで開催され、日本生協連元常務理事の斎藤嘉璋さんから「生協の平和活動の歴史」、日本生協連OBで現在は「NPO法人 ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の事務局長として活躍されている伊藤和久さんから、会の設立から今の取り組みについて、それぞれご講演とご報告をいただき、こちらのブログで講演要旨と報告要旨を掲載しているのを、まず再掲しておきます。
斎藤嘉璋さんのご講演「生協の平和活動の歴史」の要旨
伊藤和久さんの報告要旨
 そして、こちらの情報を参考にしていただき、京都の「くらしと協同の研究所」で、研究誌『季刊・くらしと協同』の戦後70年の昨年2015年の夏号(6/25発行 No.13)で斎藤嘉璋さんへのインタビュー記事が生れました。
「くらしと協同の研究所」HPの『季刊・くらしと協同』のバックナンバーのコーナーはこちら
【争論】 「生活」が先か、「平和」が先か
の中の「暮らしに寄り添えきれなかった戦前・戦中の生協」……齋藤 嘉璋
というところです。
 また、この号の巻頭言として、コープこうべ元理事長、日本生協連第6代会長の竹本成德さんの「戦後70年におもう」という文章が掲載され、この部分は研究誌の全文掲載に先駆けてpdfファイルとして公開されています。

【文献紹介】齋藤嘉璋さんのブックレット『平和とよりよい生活のために 生協の歴史から戦争と平和を学ぶ』

 2014年7月、第2次安倍内閣が集団的自衛権を合憲とする閣議決定をし、2015年にはそれを行使するための安保法制をつくろうとし、それに反対する全国的な運動がSEALDs学者の会ママの会などの新しい運動も生み出しながら「2015安保闘争」とも呼ばれるくらいの高揚を見せました。残念ながら9/19未明に参議院でも強行採決がされてしまいましたが、安保法制廃止と平和憲法を守るための運動は続いています。
 全国の多くの生協で安倍政権の強行採決を遺憾とし、国民のいのちとくらしを守ろうという声明が出され、憲法問題、平和の問題についての組合員学習の場がつくられています。
 齋藤嘉璋さんは、2015年11月にいばらきコープで開催された「コープまなびの場」で講演され、その講演録に加筆修正をされて、標題のブックレットが4月に発行されました。(A5版64ページ 頒布価格 400円+送料)
 生協がなぜ平和活動に取り組むのか、戦前の苦難と戦後の反核平和の歴史を学べる内容になっています。くらしと協同の研究所や参加型システム研究所の研究誌で書評も掲載され(杉本貴志さん、丸山茂樹さんによる)、現在までに5000部を越して普及されています。このブックレットを使っての平和学習会も各地で企画され、ご本人が講師として対応されています。
 ご自身の被爆体験の証言活動を続けている日本生協連第6代会長の竹本成德さんの『さいごのトマト』ともども、ちょうどいま全国の生協役職員向けの書籍共同購入企画「夏のブックフェア」で割引価格で注文することができます。  まだお読みでない皆様には「夏のブックフェア」を利用するか、もしくは直接お手配いただいてお読み下さるようおすすめいたします。すでにお読みの方も周囲の方々におすすめくださることをお願いしたいです。発行元に直接ご注文の際は以下にお願いいたします。
(1)齋藤嘉璋さんのブックレット発行元の地域生活研究所のHPの情報ページは以下。
該当ページはこちら
(2)コープ出版のHPの『さいごのトマト』情報ページは以下。
該当ページはこちら

 安保法制廃止と平和憲法を守る全国署名は今年の6月末までに1350万筆を超えました。7/10の参議院選挙に向けて、野党4党と「市民連合」が政策協定を結んで32の一人区全て統一候補を実現して成果を上げましたが、全体としては戦後初めて、改憲勢力が衆参両院において3分の2を超える議席を占める事態となってしまいました。これから、自衛隊の集団的自衛権行使行動、憲法改悪などを許さない世論を大きくしていく必要があります。
 生協に関わる役職員がこのために考え、行動していくためにも、生協の歴史に学びましょう。ブックレットを読むだけでなく、話し合いもできるような学習の場を各地でもっていきましょう。

※齋藤嘉璋さんのブックレット『平和とよりよい生活のために 生協の歴史から戦争と平和を学ぶ』の目次や、注文方法などは以下を開いてご確認ください。
齋藤嘉璋さんのブックレット『平和とよりよい生活のために 生協の歴史から戦争と平和を学ぶ』
<主な目次>
第1部 戦前・戦中の生協の歴史1.日本の生協の創成期
2.“新興消費組合”の誕生と発展
3.満州事変から日中戦争へ
・思想的政治的弾圧
4.日中戦争から太平洋戦争へ
・組織統制―政党も解散、自由は無し
・経済統制―生協事業の自由喪失
・太平洋戦争―生協に壊滅的打撃
・徴兵、徴用、疎開、空襲
5.“戦争の時代“と生協
第2部 生協の平和活動の歴史1.廃墟のなかから 生協の再建
・平和と民主主義をめざして
2.原水禁運動の最初
3.生協の反核・平和活動の歴史
・日本生協連の反戦・平和の取り組み
・統一原水禁運動への参加
・原水禁運動の再分裂―
・被爆者援護法と世界法廷運動
4.生協の平和活動の特徴
○特別掲載 戦後70年におもう 竹本成德

•A5版64ページ
•発行元・東都生活協同組合(2016年4月12日発行)
•頒布価格 400円+送料
  ※50冊以上 10%引き 送料無料  100冊以上 15%引き 送料無料
●頒布は1冊からお受けいたしますが、可能な限りまとめての注文にご協力ください。
●ご希望の方は(1)注文数、(2)お名前(組織名)、(3)ご住所(4)連絡先を明記のうえ、研究所までご連絡ください。
Eメールは→ office@chiikiseikatsu.org


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【2016/08/15 19:22】 | 文献紹介
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生協人間(再版表紙)40%縮小トリミング.jpg

<Mより発信>
 元コープこうべ理事長、日本生協連第5代会長で、“ミスター生協”とも呼ばれた高村勣さんは昨年(2015年)3/15に逝去され、7/5(日)に追悼展が有志の実行委員会により、コープこうべ生活文化センターを会場にして開催されました。高村さんの生前の活動をふりかえるパネル展示と追悼展にあわせて発行する『髙村勣随想集 生協人間 追悼展特別編集版』の編集にあたり、資料室に保存されてある日本生協連の発行物を存分に活用していただきました。『高村勣随想集 生協人間 追悼展特別編集版』は、追悼展実行委員会が運営募金協力者への配布・当日会場販売用に発行されましたが、さらにもう一回り多くの生協や協同組合について学びたい方々にご活用をいただくため、1周忌を迎えたこの3月に再版されました。

 資料室に戦後まもない時期に出された賀川豊彦の『協同組合の理論と実際』のミニパンフレットの現物があり、灘購買利用組合で働き始めた高村さんが「この小冊子によって腰掛けのつもりがとうとう50年もこの生協で働き続けることになった」ものだとわかって、復刻出版に協力したこともあり、そのエピソードを特別編集版に再録をおすすめしてコープ出版の了解も得て実現した次第です。
 生協の運動と事業を双心円に例えた「矛盾への挑戦」などを読んでいただけば、日本生協連を経営主義に転換させてしまったのが高村さんだという先入観がある方も、きっと目からうろこになるはずです。

 日本生協連の全国生協の役職員向け書籍共同購入企画の初夏のブックフェアでの取り扱い(6/10注文締切り)もされています。現役の役職員は、共同購入価格の割引もありますので、そちらでのご利用をおすすめいたします。なお、その他のご希望の方にも、有償(1冊1,000円+送料)で頒布するとのことです。

【文献紹介】『髙村勣随想集 生協人間 追悼展特別編集版』

 以下、実行委員会が再版にあたって出されたチラシから引用してご紹介します。 なお、高村勣さんの苗字については、ハシゴダカの「髙村」が正字です。
編集:髙村勣さん追悼展実行委員会/発行:(株)甲南堂印刷
規格:A5判・128頁/発行日:2016年3月15日(再版)
 
戦後の混乱の中、腰掛けのつもりで灘購買組合で働き始めた筆者は、新入職員教育で与えられた賀川豊彦の『協同組合の理論と実際』に衝撃を受けて生協に囚われの身となった(「賀川豊彦との出会い」)。神戸の焼け跡を一軒一軒訪ね、組合員を再組織する仕事が生協人生の原点(「初心」)。他社に先駆けたスーパー式店舗導入など、生協発展の基礎を築いた(「Seer」)。
 生協の運動と事業を双心円に例えた「矛盾への挑戦」、日本生協連会長として生協規制の矢面に立った「生協あり方懇」の答申を受けた「雲の上に青空」など、コープこうべに働く若い仲間たちのために職員内報『にじの友』に書き続けたエッセイを中心とした51本。
 既刊の『生協人間』(3冊)未掲載の原稿も多数掲載。神戸新聞に10回連載された「トップの肖像」(1990年)がまとめて読めるのも貴重。個人史を超えて、戦後の生協発展期の歴史を学ぶのにも最適の1冊。

<著者紹介>
髙村 勣(たかむら・いさお)● 元コープこうべ理事長・日本生協連会長。元神戸市社協理事長。1923年、大阪生まれ。46年、コープこうべの前身である灘購買組合入所以来、生協一筋の“生協人間”。85~93年、日本生協連会長。退任後は、パソコンや写真などにも積極的に挑戦。著書に、『生協人間』『生協経営論』など。2015年3月15日、召天。

<主な目次>
第1部  まど:『にじの友』(コープこうべ職員内報)
第2部  随想:①赤えんぴつ(『運営通信』)
     ②思い出の数々と賀川豊彦
       (『生協運動 想いで集』:コープ出版㈱)
     ③近頃あれこれ(『新版・生協人間』)
     ④写心展(写真展パンフ)
第3部  新聞報道:トップの肖像・評伝・追想メモリアル(神戸新聞)
※なお、4月に起きた熊本地震を受けて、「地震と生協」(『生協運動 想いで集』:コープ出版㈱)の文章を特別付録(別冊)としてつけて配本することにしたとのことです。

<頒布の詳細は以下>
頒布価格:1,000円(税込) + 送料(4冊まで100円)
  ※5冊以上は送料500円
申 込 先:株式会社 甲南堂印刷
  ※頒布のみで、書店などでは販売しておりません。
申込方法: 郵便振替口座に代金(送料込)をお振り込みください(手数料はご負担ください)。
  加入者名:水落 稔(ミズオチ ミノル)
  口座記号番号:00930-5-275675
※その他、書籍に関するお問い合わせは、追悼展実行委員会事務局・橋口まで(Email:f-hassyアットnifty.com)

なお、実行委員会事務局による「生協人間」フェイスブックページも開設されました。様々なエピソードも連載されていますので、そちらもお目通しをおすすめいたします。
 「生協人間」フェイスブックページはこちら

【2016/05/25 12:55】 | 文献紹介
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藤田孝典著『下流老人』表紙70%縮小.jpg

<Mより発信> ※藤田さんの講演が近づいたため、2015年12/28の記事アップを再掲いたします。

【文献紹介】藤田孝典著『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)

 もう10年以上前のことだろうか。街角で『ビッグイシュー』とかいうタイトルの雑誌を売る姿が気になっていた頃、ビッグイシュー日本の方の話を聞く企画が日本生協連の有志によって開催された。私は残念ながら参加できずにバックナンバーだけでもと頒けていただいて『ビッグイシュー日本版』の実物を読んで衝撃を受けた。ホームレスの仕事をつくり自立を支援するためのストリートマガジン事業はイギリスから始まり、日本でも始まっていたということで、その内容も読み応えが十二分にあった。以来、私はHPをチェックして面白そうなテーマの号はJR四ツ谷駅頭の販売員さんから買って読んできた。設立10周年のシンポジウム企画で浜矩子さんの話を聞いてきた内容はこちらでも報告済み
 その後、テレビの報道等で私が住んでいるさいたま市に生活困窮者支援のNPO法人「ほっとプラス」というところがあることがわかり、一度きちんと知りたいものだと思ってきた。協同組合塾の幹事会で幹事のYさんから千葉の生活クラブ生協で「ほっとプラス」の藤田さんの講演会があって好評だったという情報と塾でも講演してもらおうという提案があり、2015年度の企画でお願いすることになり、その後、2016年3/30(水)で講演を引き受けていただいた。そしてYさんからベストセラーの『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』を回してもらって読んだ。まさに、「老後の貧困はひとごとではない」ということに共感した。
 「下流老人」とは普通に暮らすことができず“下流”の生活を強いられる貧困高齢者を意味する造語とのこと。現在の高齢者だけでなく、近く老後を迎える人々にも「一億総老後崩壊」ともいえる状況が生れる危険性が増しているという。
 日本には、相当にボロが出ているとはいえ国民皆保険制度があるが、アメリカにはないので中流の人々も個人的蓄えを使い尽くせば生活保護を受けることになるという話はよく聞いていた。敗戦後、対米従属の政策をとってきた日本だが、曲がりなりにもある程度の社会保障制度を整備させてきていたが、非正規雇用をどんどん拡大させていくことを野放しにしている政権のもとで、貧困層が増大している。自分がそういうことに直面するまできちんと向き合って考えないできている日本人が多すぎるのではないか。
 藤田さんは本書の中で、高齢者が貧困に陥る典型パターンを5つ挙げている。
〔1〕本人の病気や事故により高額な医療費がかかる
〔2〕高齢者介護施設に入居できない
〔3〕子どもがワーキングプアや引きこもりで親に寄りかかる
〔4〕熟年離婚
〔5〕認知症でも周りに頼れる家族がいない
 こういう状況に陥っている人、陥る可能性が否定できない人はみんな「ひとごと」ではないはずだ。「自分でできる自己防衛策」の章では、下流老人にならないためだけでなく、なってしまった場合にどうすれば安らかな老後を送れるかということまで言及されている。キーワードには「プライドを捨てよ」「『受援力』を身につけておく」という言葉もある。
 最終章の「一億総老後崩壊を防ぐために」の冒頭に「下流老人の問題が、人間のつくった社会システムの不備から派生しているものであるなら、その社会システムを変革できるのもまた、人間である。これからのあるべき社会のビジョンを示しながら、わたしたちの社会をどのように構築し直していけばよいのか、やや挑戦的、試行的に述べたい」とある。
 資本主義社会では一定の貧困層が出てくるのは避けられず、社会的な富の再配分の手段として生活保護制度があるのだから、受給者に厳しい目を向けるのは確かにおかしい。年金や介護保険と同様に権利として受けやすくしていくための提言もなるほとど思えた。
 以上、簡単にご紹介してきたが、3/30の協同組合塾の例会に参加する前に予習として読まれることを是非ともおすすめしておきたい。
(追記)
国民年金等の受給額が少ない場合に、不足分を生活保護を受けることができるということを本書で初めて知った。社会保障制度についてきちんと勉強する必要を痛感している。

【2016/03/23 12:55】 | 文献紹介
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賀川豊彦の協同組合の7つの中心思想.jpg
<Mより発信>
東京学生消費組合の十周年に際して賀川豊彦が送った揮毫「未来は我等のものな里」については、このブログで既に記事を書いている。その記事はこちら
大学生協連がある周年記念でそのレプリカ(複製)の額を全国の生協に贈っていたのだが、それに触発されて灘神戸生協が標題の揮毫を全国の生協に贈ったというエピソードをご紹介したい。
大学生協連は、「1984年度トップ研修セミナー」で当時の灘神戸生協組合長理事だった高村勣さんに「生協の現状と80年代の展望」というテーマで講演をしていただき、講演録を『大学生協経営資料』1984年2月発行の第46号に掲載している。当時の大学生協連の専務理事だった高橋晴雄さんが依頼をして実現したのだが、その高村氏は冒頭に「大学生協というと先入観があり、みなさんの波長にあう話などできないのではと思っていましたが、先日送っていただきましたみなさんの機関誌を読んで安心いたしました。福武会長の文章には時々お目にかかっていましたが、福武先生の論旨ははなはだ明快であり、そしてしかも非常に常識的であり、同じ生協運動者として琴線にふれるものがあったわけであります。そういう意味で、これだったら安心して何とか話ができるのではないかと思って来ました」と話を切り出されており、このセミナーは高村さんから大学生協連は路線的に遠いと思われていた距離感がなくなった画期的なものだったことがわかる。
そして灘神戸生協の歴史と現状を語り、賀川豊彦の考えた「協同組合の中心思想」について、戦後に灘生協(存命中は合併前だった)に講演でいらした際に「先生、何か書いてください」とその場で立ったままサッサッサと書かれた揮毫を額にして常勤役員の会議室に掲げられてあったものをコピーで紹介しながら語られている。そして講演資料として部下にコピーをさせながら、「おい、ひとつこれをコピーして全国の生協の仲間に進呈しようやないか」ということになり、作業指示をして講演にきたのだと語っているのだった。
この講演録は、昨年2015年3月に高村さんが亡くなって、追悼展を有志による実行委員会で開催することになり、高橋晴雄さんが掲載された『大学生協経営資料』も是非とも展示をしてほしいということで、資料室にも現物がないかを問合せをしていただいたことで貴重な資料だということがわかった。
この講演録からは一部分が、1999年に発行された高村さんの随想集『新版 生協人間』にも抄録として「生協の経営と経営者」というタイトルで掲載されているが、そのあたりのエピソードは載っていない。
最近、コープネット事業連合で賀川豊彦研究会をされているKさんが資料の閲覧にいらした際に、「賀川豊彦の協同組合の中心思想」の額を絵葉書にしたものを写真立てに入れたものをプレゼントしてくださったので、そのエピソードをお知らせしたところ、「知らなかった」と喜んでいただいた。
そこで、こちらのブログでもご紹介させていただくことにした。以下はKさんが絵葉書の附属資料にされている文からコピペさせていただく。冒頭の写真は、その資料からの転載。

【賀川豊彦の揮毫「協同組合中心思想」】
   コープネット事業連合 賀川豊彦研究会
 1954年、当時灘生活協同組合(現コープこうべ)の田中俊介組合長の要請により、賀川豊彦がその場で書いた協同組合中心思想です。 ※原版は1995年阪神・淡路大震災で焼失!(→焼失したのではなく瓦礫の中に埋まっていたという証言コメントをいただきました。)
◆生協運動に対する賀川豊彦の思想が7つの言葉に集約されています。
《利益共楽》
 安心・健康・福祉など人間の生活を向上させる利益を一人一人が力を分かち合い、共に豊かに幸せになろうとする協同組合運動の姿を意味している。
《人格経済》
 カネ(金)を中心に、強い者が勝ち弱い者が没落する利益追求の資本主義社会ではなく、いかに人間の尊厳を確保し、人間中心の経済社会を確立することを意味している。
《資本協同》
 労働の蓄積である貯蓄を互いに出資し合い、協同の理念のもと、生活を豊にする生産のための資本として活かすことを意味している。
《非搾取》
  弱者の犠牲の上に成り立つ、搾取によるカネ(金)持ち支配の社会ではなく、自由・平等で利益を分かち合える、共存共栄の社会を創造することを意味している。
《権力分散》
  権力が集約されることなく、個人個人が人間としての主権が保障され、一人ひとりが自分自身で自覚し、自立し、行動することの必要性を意味している。
《超政党》
  特定政党に偏することなく、生活者、消費者の立場で主張し、要求する生活協同組合の姿勢を意味している。
《教育中心》
 人間的な生活を確立するためには、個人個人の意識向上が必要である。それには、生活者一人ひとりの教養を広め、高める教育が重要であるということを意味している。

(追記)(コメントをいただいて2/26修正)
上記にもあるように、コープこうべにあった原版は阪神・淡路大震災で失われてしまったのだが、残った部分が確認できたのは「教育」の部分だったと元こうべの職員の方にお聞きしている。やはり協同組合は「教育」が大事だと何か象徴的に感じてしまった。そして、原版は失われても全国の生協に贈られたレプリカで賀川豊彦の揮毫に接することができるのは幸いというしかない。

(2/27写真の追加)
20150705こうべにある賀川豊彦の揮毫のレプリカ50%縮小
この記事を見た日本生協連のOGから、昨年亡くなった髙村勣さん(元コープこうべ理事長、元日本生協連会長)の追悼展(昨年7/5)に行かれた時に撮影したというレプリカの額の写真を送ってくださった。会場だったコープこうべ生活文化センターの2階にあったとのこと。
このような額が全国の生協にあるはずであり、是非ともこのような情報を共有化していただきたいと思っている。

(3/4追記)
日本生協連においては、渋谷コーププラザ12階の役員打合せ室に掲げられていることが確認できた。

【2016/02/24 19:59】 | 文献紹介
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「協同組合の中心思想」その後…
hassy
倒壊したコープこうべ本部の瓦礫から掘り出されたブツの目撃者です。確かに「教育中心」の言葉以降(左側)が残っていました(焼失ではなく瓦礫に埋もれておりました)。まさに“中心思想”で、何よりも教育が大切と、賀川さんが教えてくれたのでしょうね。
これを竹本理事長(当時)が持った写真? 新聞記事?があったように思うのですが…。それにしても…掘り出されたブツは、どこに行っちゃったんでしょうねぇ??


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